発注する側と、受注する側。従来の「元請-下請」という垂直的な関係から、PSCと協和会が水平的・対等なパートナーシップを築くこと――それが「パートナリング」という考え方です。
「パートナリング」という言葉は、1994年にイギリス政府の依頼でマイケル・レイサム卿がまとめた報告書『Constructing the Team』(通称:レイサムレポート)から広まりました。
当時のイギリスの建設業は、値下げ競争と細かすぎる契約条件によって元請けと下請けが対立し、訴訟やクレームが絶えない状態でした。レイサムはこれを「対立的(アドバーサリアル)」な業界体質だと問題視し、"敵と味方"のような関係をやめ、発注者と施工者が同じチームとして、オープンに・信頼し合いながら仕事を進める「パートナリング」を提言したのです。
レイサムレポートは、こうしたパートナリングによってコストを最大30%、工期を最大25%削減できる可能性があると示し、その後の建設業界改革の出発点になりました。ただし、レイサム自身も「馴れ合いになってはいけない」と釘を刺しています。パートナリングは仲良しクラブではなく、あくまで発注者に価値を届けるための、緊張感のある協力関係です。
PSC × 協和会のパートナリング戦略も、この考え方を土台にしています。 出典:Latham, M.(1994)"Constructing the Team"(英国政府委託報告書)
「上下のない関係構築が事業の安定と継続のキーワード」――本プロジェクトの根底にあるのは、法令遵守を土台としたフェアな契約、「建設業で働くと豊かになれる」という未来を描けるキャリアパス、そして現場の生産性を科学的に計測・改善するDX推進。この3本柱を一体的に推進することが、パートナリング戦略の中核です。
2045年には就業者が2020年比で半数になる見込み。「広島ショック」(2024年、20社参加の訓練校で入校者が初のゼロに)など採用難が深刻化。大手ハウスメーカーが正社員大工採用を本格化し、専門工事業者への人材流入が困難に。
改正建設業法(2024年12月施行)により標準労務費が導入。材工一式から労務費を分離・保護する仕組みが整備された。値引き要求・単価下げが常態化した元請-下請関係が、制度面から問われる時代に。
短工期・低価格の慣行が専門工事業者の投資余力を奪い、DX推進や人材育成が後回しになる構造が業界全体で続いている。協和会アンケートでも67.3%がDX支援を期待。「稼げる業界」への転換が急務。
業界共通の課題でありながら、最初に協力会社支援の仕組みを整えた元請けが、優秀な専門工事会社から選ばれる存在になる――これは長期的な競争優位性を生む戦略的選択です。「コンプライアンスに取り組む先進的なゼネコン」「キャリアパスを一緒に考えてくれる元請け」というイメージを築くことが、PSCにとって実質的な経営資源になります。
技能者の安定雇用と適切な賃金を保証し、協力会社の安定経営へつなげる
BIM/CIM活用・省人化技術の導入により、少人数でも高品質な施工体制を構築する
企業を超えた育成支援で次世代技能者を育成し、CCUS普及も推進する
働きがいのある環境と高度な技術力で発注者の信頼を得て、安定的な受注を確保する
パートナリング戦略を具体的な取り組みとして推進する、3か年の変革プロジェクトです。現在はPSC東京建築支店が主導していますが、将来的な全社展開を見据えています。
| プロジェクト正式名称 | 協和会関係性強化プロジェクト |
|---|---|
| クライアント | ピーエス・コンストラクション株式会社(PSC)東京建築支店 |
| コンサルタント | エープラス・M&F |
| 学術パートナー | 芝浦工業大学 蟹澤研究室 |
| 対象 | 東京協和会(PSCの協力会社グループ/専門工事業者 30社+) |
| 推進範囲 | 現在:PSC東京建築支店が主導 → 今後:他支店・全社への展開を目指す |
| 期間 | 2025年度(1年目)〜2027年度(3年目)の3か年計画。年度は4月始まり・3月終わり(例:2026年度=2026年4月〜2027年3月)。 |
| ビジョン | 「信頼を築き、未来を拓く」――PSCと協和会が対等なパートナーとして、建設業界の未来を共に切り拓く |
すなわち「優秀な専門工事会社の確保」。中堅ゼネコンであるPSCが元請として、協力会社が抱える悩みを先導して解決することで、他のゼネコンに先駆けて協力会社を支援できる環境を整え、長期的な競争優位性を生む。
| 優先度 | 協力会社の悩み | 対応する柱 |
|---|---|---|
| 1位 | 人手確保が難しい | 柱② キャリアパス(魅力化)+ 柱① フェアな契約(適正賃金) |
| 2位 | 人材育成 | 柱② キャリアパス(育成制度) |
| 3位 | 生産性向上と賃金への反映 | 柱③ 生産性向上(DX推進)+ 柱① フェアな契約(単価反映) |
| 4位 | 魅力ある仕事にすること | 柱③ 生産性向上・働き方改革(新しい働き方)+ 柱② キャリアパス(年収モデル) |
2025年2月の構想協議から2027年3月の年度報告まで。1年目で基盤を築き、2年目は知るから動くへ、取り組みを深めます。
3か年計画のいま:1年目「知る・つながる・動き出す」で基盤を築き、2年目の今年は「知るから、動くへ」実践を深めます。3年目(2027年度)は「共に選ばれる存在になる」ことを目指します。
基盤構築・成果「知る・つながる・動き出す」
三者体制の確立と協力会社の実態把握・問題意識の共有には成功したが、知識共有にとどまり「実際に動く」段階には至らず。この持ち越し課題が2年目のテーマに直結する。
展開フェーズ「知るから、共に動くへ」
| 取り組み | 概要 |
|---|---|
| ① 協和会とのイベント実施(年4回) | キックオフ(8/26)+勉強会2回+振り返り会。すべて双方向ワークショップ形式で開催する。 |
| ② 協和会との定例会(WG) | 協和会との定例会にWGを設置(9月〜)。テーマはキックオフでの意見徴収をもとに設定する。 |
| ③ 共同研究 | 蟹澤研究室と、CCUS入退場記録を用いた歩掛かり調査、ビルダーズポイントと技能者レベルの関連性などを調査する。 |
| ④ 育成支援プログラム | 技能者がキャリアの見通しを持って働き続けられるよう、採用・定着・処遇改善を一体的に支援する。 |
| ⑤ CCUS・ビルダーズポイント普及 | 社内認知・活用を強化。リバスタと協力体制のもと、登録率向上と操作サポートを推進する。 |
| ⑥ アンケート実施・データ分析 | 各イベント後に実施し、効果と課題を可視化。協和会・社内向け両面で取り組みに反映する。 |
3年目(2027年度)に向けて:「共に選ばれる存在になる」。協力会社に具体的な変化が起き、優良な協力会社が積極的にPSCを選ぶ関係へ。東京建築支店の取り組みを他支店・全社へ広げる検討も視野に。