PARTNERING STRATEGY 2026

パートナリング戦略
PSC東京建築支店と東京協和会の取り組み

「信頼を築き、未来を拓く」
PSCと協和会が対等なパートナーとして、建設業界の未来を共に切り拓く
――協和会関係性強化プロジェクト
パートナリング戦略とは マイルストーンを見る 2026年度の取り組み
2年目
2026年度(進行中)
49
アンケート回収社数
58
勉強会 延べ参加人数
4.25
勉強会 満足度 / 5.0

パートナリング戦略とは

発注する側と、受注する側。従来の「元請-下請」という垂直的な関係から、PSCと協和会が水平的・対等なパートナーシップを築くこと――それが「パートナリング」という考え方です。

パートナリングの原点 ― 1994年 レイサムレポート

「パートナリング」という言葉は、1994年にイギリス政府の依頼でマイケル・レイサム卿がまとめた報告書『Constructing the Team』(通称:レイサムレポート)から広まりました。

当時のイギリスの建設業は、値下げ競争と細かすぎる契約条件によって元請けと下請けが対立し、訴訟やクレームが絶えない状態でした。レイサムはこれを「対立的(アドバーサリアル)」な業界体質だと問題視し、"敵と味方"のような関係をやめ、発注者と施工者が同じチームとして、オープンに・信頼し合いながら仕事を進める「パートナリング」を提言したのです。

1
対立 → 信頼へ契約書で縛り合う関係から、共通の目的に向かうチームの関係へ
2
後始末 → 未然防止へトラブルが起きてから対処するのではなく、起こる前に一緒に手を打つ
3
押し付け合い → 共同管理へリスクを一方に押し付けるのではなく、双方で引き受け合う

レイサムレポートは、こうしたパートナリングによってコストを最大30%、工期を最大25%削減できる可能性があると示し、その後の建設業界改革の出発点になりました。ただし、レイサム自身も「馴れ合いになってはいけない」と釘を刺しています。パートナリングは仲良しクラブではなく、あくまで発注者に価値を届けるための、緊張感のある協力関係です。

PSC × 協和会のパートナリング戦略も、この考え方を土台にしています。 出典:Latham, M.(1994)"Constructing the Team"(英国政府委託報告書)

「上下のない関係構築が事業の安定と継続のキーワード」――本プロジェクトの根底にあるのは、法令遵守を土台としたフェアな契約、「建設業で働くと豊かになれる」という未来を描けるキャリアパス、そして現場の生産性を科学的に計測・改善するDX推進。この3本柱を一体的に推進することが、パートナリング戦略の中核です。

なぜ今、この戦略が必要か ― 建設業界が直面する3つの課題
CHALLENGE 01

担い手不足の深刻化

2045年には就業者が2020年比で半数になる見込み。「広島ショック」(2024年、20社参加の訓練校で入校者が初のゼロに)など採用難が深刻化。大手ハウスメーカーが正社員大工採用を本格化し、専門工事業者への人材流入が困難に。

CHALLENGE 02

価格慣行の不透明さ

改正建設業法(2024年12月施行)により標準労務費が導入。材工一式から労務費を分離・保護する仕組みが整備された。値引き要求・単価下げが常態化した元請-下請関係が、制度面から問われる時代に。

CHALLENGE 03

生産性向上と処遇改善の遅れ

短工期・低価格の慣行が専門工事業者の投資余力を奪い、DX推進や人材育成が後回しになる構造が業界全体で続いている。協和会アンケートでも67.3%がDX支援を期待。「稼げる業界」への転換が急務。

なぜ今、PSCが動くのか

業界共通の課題でありながら、最初に協力会社支援の仕組みを整えた元請けが、優秀な専門工事会社から選ばれる存在になる――これは長期的な競争優位性を生む戦略的選択です。「コンプライアンスに取り組む先進的なゼネコン」「キャリアパスを一緒に考えてくれる元請け」というイメージを築くことが、PSCにとって実質的な経営資源になります。

取り組みの3本柱
1

フェアな契約の実現

  • 標準労務費への理解を深め、労務費を見える化する
  • 適正価格・適正工期を率先して実践する
  • 見積りにおけるルールを整備する
2

キャリアパス・人材育成

  • CCUS・ビルダーズポイントを活用した評価を実践する
  • 採用・定着の課題に向き合い、育成を支援する
  • 未来を描けるキャリアパスを実現する
3

生産性向上・働き方改革

  • BIM・DXの活用により、現場の効率化を図る
  • 安全・健康にも配慮した新しい働き方を導入する
  • 着工前の計画・準備を充実させ、手戻り・手待ちの削減や工程管理の改善を進める
ビジョンが実現するサイクル
優秀な専門工事会社
の確保
現場の安定的な運営
・QCDSAの確実な実施
発注者からの信頼
・安定的な受注の確保
さらなる成長の
原動力(ループ)
未来像の4つの柱
魅力的な労働環境

技能者の安定雇用と適切な賃金を保証し、協力会社の安定経営へつなげる

技術革新と生産性向上

BIM/CIM活用・省人化技術の導入により、少人数でも高品質な施工体制を構築する

技能継承と人材育成

企業を超えた育成支援で次世代技能者を育成し、CCUS普及も推進する

選ばれる組織体

働きがいのある環境と高度な技術力で発注者の信頼を得て、安定的な受注を確保する

PSCの協和会関係性強化プロジェクトの概要

パートナリング戦略を具体的な取り組みとして推進する、3か年の変革プロジェクトです。現在はPSC東京建築支店が主導していますが、将来的な全社展開を見据えています。

プロジェクト正式名称協和会関係性強化プロジェクト
クライアントピーエス・コンストラクション株式会社(PSC)東京建築支店
コンサルタントエープラス・M&F
学術パートナー芝浦工業大学 蟹澤研究室
対象東京協和会(PSCの協力会社グループ/専門工事業者 30社+)
推進範囲現在:PSC東京建築支店が主導 → 今後:他支店・全社への展開を目指す
期間2025年度(1年目)〜2027年度(3年目)の3か年計画。年度は4月始まり・3月終わり(例:2026年度=2026年4月〜2027年3月)。
ビジョン「信頼を築き、未来を拓く」――PSCと協和会が対等なパートナーとして、建設業界の未来を共に切り拓く
本質的な目的
表の目的(名称)

協力会社との関係性強化・パートナリングの推進

実の目的

安定した建築現場の運営・品質の確保

すなわち「優秀な専門工事会社の確保」。中堅ゼネコンであるPSCが元請として、協力会社が抱える悩みを先導して解決することで、他のゼネコンに先駆けて協力会社を支援できる環境を整え、長期的な競争優位性を生む。

協力会社が抱える悩みと優先順位
優先度協力会社の悩み対応する柱
1位人手確保が難しい柱② キャリアパス(魅力化)+ 柱① フェアな契約(適正賃金)
2位人材育成柱② キャリアパス(育成制度)
3位生産性向上と賃金への反映柱③ 生産性向上(DX推進)+ 柱① フェアな契約(単価反映)
4位魅力ある仕事にすること柱③ 生産性向上・働き方改革(新しい働き方)+ 柱② キャリアパス(年収モデル)
推進体制 ― 4者が連携
HOST
PSC
東京建築支店
プロジェクト主宰
適正発注の率先実践
(将来は全社展開を目指す)
PARTNERS
東京協和会
各施策への参加・実践
ACADEMIC
芝浦工業大学
蟹澤研究室
学術パートナー
共同研究・知見提供
CONSULTING
エープラス・M&F
コンサルティング
企画・運営・伴走支援

マイルストーン

2025年2月の構想協議から2027年3月の年度報告まで。1年目で基盤を築き、2年目は知るから動くへ、取り組みを深めます。

本年度のマイルストーン(目標)
1
改正建設業法の理解と順守協和会各社が標準労務費・改正内容を正しく理解し、実務に反映する
2
見積書の労務費見える化とルール整備見積書への労務費記載ルールを整備・浸透。まず最低限の記載項目から、業界の標準化を図る
3
CCUS・BPの登録者拡大協和会加盟企業のCCUS・ビルダーズポイント登録者数を大きく増やす(目標値は今後設定)
準備期間(〜2025年3月・年度切替前)
2025.02
プロジェクト提案・初回打合せ完了
PSCと協力会社パートナリング戦略の構想を初期協議。
2025.03
計画書策定完了
「信頼を築き、未来を拓く」をスローガンに、3本柱の施策体系を確定。
2025年度(1年目)― 基盤づくり (2025年4月〜2026年3月)
2025.04
ロードマップ提示完了
中期目標、年収1,000万円モデル、CCUS活用方針を整理。
2025.07
月次定例スタート完了
協和会との関係性強化フェーズに正式着手。三者体制を確立し、月次定例(年12回)を継続運営。
2025.09
意見交換会(約70名)イベント
PSC約20名・協和会約46名が参加。事前アンケート49社分を分析し、業界の構造課題を言語化。
2025.12
第1回勉強会イベント
テーマ「改正建設業法と標準労務費」。「真水は削れない」という標準労務費の考え方を共有。
2026.03
第2回勉強会(32名・有意義度93%)イベント
テーマ「標準労務費と生産性(BIM)」。歩掛かり把握とBIM活用、鉄筋工事のキャリアパス事例を紹介。
2026年度(2年目)― 知るから、動くへ (2026年4月〜2027年3月)
2026.06
2025年度振り返りアンケート・事業準備会議完了
1年目の振り返りと2年目のロードマップ・共同研究テーマを検討。
2026.06.29
第1回WG定例会議:2026年度ロードマップ確定イベント完了
2026年度ロードマップと蟹澤研究室との共同研究テーマを確定。
2026.07.16
WG定例会議 第2回:年間イベント日程確定イベント完了
2026年度イベント日程(年4回・8/26協和会キックオフ起点)と役割分担を確定。
2026.08.26
協和会キックオフ開催(イベント①)予定
2025年度の取り組みを協和会へ共有し、2026年度の方針を発信。
2026.10.05
勉強会開催(イベント②・適正な労務費確保)予定
蟹澤教授出席。標準労務費の実務浸透をテーマに開催。
2026.11
蟹澤研究室 共同研究 中間報告
モデル現場での歩掛かりデータ収集・分析の中間報告。
2026.11〜12月
勉強会開催(イベント③・人材定着課題)予定
蟹澤教授出席。採用・定着の新しい常識をテーマに開催(日程調整中)。
2027.01
育成支援プログラム草案
草案の共有とフィードバック収集。
2027.01〜02月
振り返り会開催(イベント④)予定
蟹澤教授出席。適正価格・適正工期実現への総括と、2027年度(3年目)計画を協和会全体で共有(日程調整中)。
2027.03
年度総括レポート確定
2026年度の総括と2027年度(3年目)計画の確定。

2025年度のまとめと、2026年度のとりくみ予定

3か年計画のいま:1年目「知る・つながる・動き出す」で基盤を築き、2年目の今年は「知るから、動くへ」実践を深めます。3年目(2027年度)は「共に選ばれる存在になる」ことを目指します。

完了

2025年度(1年目):基盤づくり、課題把握

基盤構築・成果「知る・つながる・動き出す」

達成事項
  • 三者体制の確立(月次定例 × 12回)
  • 意見交換会開催・49社アンケート回収
  • 勉強会2回実施(延べ58名・満足度 4.25/5.0)
  • 協和会が元請けへ課題・要望を伝える場を創出
  • 標準労務費・改正建設業法の基礎知識を共有
  • 取り組み案件情報の共有
  • ビルダーズポイントの導入
残された課題

三者体制の確立と協力会社の実態把握・問題意識の共有には成功したが、知識共有にとどまり「実際に動く」段階には至らず。この持ち越し課題が2年目のテーマに直結する。

進行中

2026年度(2年目):知るから、動くへ

展開フェーズ「知るから、共に動くへ」

3本柱の重点
  • 柱①:見積の透明化(材工一式→労務費分離)を動かし始める
  • 柱②:育成課題の実態把握と育成制度草案の完成
  • 柱③:BIM・DX活用に加え、新しい働き方(サマータイム等)・安全衛生の観点からの生産性向上を検討
主なイベント
  • 協和会キックオフ(8/26)
  • 勉強会2回(適正な労務費確保/人材定着課題)
  • 振り返り会(次年度計画の共有)
  • 蟹澤研究室との歩掛かりデータ収集・中間報告
2026年度 6つの取り組み
取り組み概要
① 協和会とのイベント実施(年4回)キックオフ(8/26)+勉強会2回+振り返り会。すべて双方向ワークショップ形式で開催する。
② 協和会との定例会(WG)協和会との定例会にWGを設置(9月〜)。テーマはキックオフでの意見徴収をもとに設定する。
③ 共同研究蟹澤研究室と、CCUS入退場記録を用いた歩掛かり調査、ビルダーズポイントと技能者レベルの関連性などを調査する。
④ 育成支援プログラム技能者がキャリアの見通しを持って働き続けられるよう、採用・定着・処遇改善を一体的に支援する。
⑤ CCUS・ビルダーズポイント普及社内認知・活用を強化。リバスタと協力体制のもと、登録率向上と操作サポートを推進する。
⑥ アンケート実施・データ分析各イベント後に実施し、効果と課題を可視化。協和会・社内向け両面で取り組みに反映する。

3年目(2027年度)に向けて:「共に選ばれる存在になる」。協力会社に具体的な変化が起き、優良な協力会社が積極的にPSCを選ぶ関係へ。東京建築支店の取り組みを他支店・全社へ広げる検討も視野に。